柔らかく“上品”な写真はどうやって撮るのか?


いつのまにか庭の野菊がたくさん花開いていた。ダイニングテーブルに飾るため、ひと茎切り取って一輪挿しに差してみた。気を遣う仕事で疲れて帰ってくる妻にとって心の慰めになるだろうと思って私は花を活ける。人間、思い遣りが大切だ。

ちょうど玄関わきの和室で布団を干していたので、これまた玄関のクローゼットを開けるとすぐに取り出せる脚立を取り出して布団の中に置いた。そこにいま野菊を差した一輪挿しを置いて、書斎からカメラを持って来て写真を撮ってみた。

いつものことではあるが、ラフに撮っているのでピントの位置が狙ったところから少し外れている。さらに、水平も取れない。まあ、そんなことは丁寧に撮れば良いだけの話である。別に、きっちりした写真が撮れていなくても一向に構わないのである。なぜなら、ブログネタとして1枚撮ったというだけの話であるから。

一階の和室も南向きである。東側に掃き出し窓があり、南側にも窓がある。太陽が南中にある昼前後にはこの窓からたくさんの光が部屋に注ぎ込む。私は毎朝この窓の前に布団を干す。その布団の間に一輪挿しを置いて写真を撮った訳は、「デフューズ」された光と、「バウンス」した光の両方がそこに用意されているからである。

ポートレートを撮る際の基本は「デフューズ」された光と、「バウンス」させた光を使うことである。必ずそうしなければいけないということではないが、基本パターンである。「デフューズ」した光は柔らかい。女性のポートレートを撮る際には柔らかい光で撮るのが基本である。昨今女性ポートレートは逆光で撮ることが一般的であるが、逆光で撮ればモデルの「前面」はシャドーになる。で、そこに「バウンス光」を当ててシャドーを起こして撮影する。

ブツ撮りの場合も事情は同じである。例えば花の写真を撮る場合、女性を撮る場合と同様「柔らかく」撮るケースが少なくない。もちろん、「強い光」で輝いた雰囲気の花の写真を撮るというのもよくやることとで、必ず柔らかい光で撮らなければいけないということではないが、「柔らかい光」で撮れば「上品」な描写の写真となる。

光には「方向性」がある。だから、真正面から光を受けている物体以外には必ず「影」になる部分が生じる。その影をそのままにしておいても綺麗な写真であるケースも少なくない。男性ポートレートの場合にはそういう撮り方をすることの方が多い。コントラストのしっかりした写真の方が「男らしさ」が現れるからである。しかし、女性のポートレートの場合、コントラストの強い写真より「柔らかい」写真の方が好まれる。だから、デフューズした光をメインにし、バウンス光でシャドーを起こして撮影するというのがもっともよくやられる撮影手法である。

シャドーを起こす方法はいろいろある。もっとも「簡単」なのはストロボ光をあてることである。スタジオで女性ポートレートを撮る場合、メインライトの他に「フィルライト」を使うことが一般的である。「フィルインライト」というのは「補助光」という意味合いである。「fill in」とは「埋める」とか「満たす」という意味である。つまり、光が足りない部分を「埋めて」「満たす」ためのライトということである。

ロケ撮影などでは、ストロボを使用せず「レフ板」だけで撮影することも珍しくない。「レフ板」でも適切なサイズを適切な枚数使えば綺麗な「フィルインライト」を作ることができる。スタジオなどでは、ストロボのある位置の反対側に「カポック」を立てるということがよく行われる。

「カポック」というの「板」を2枚蝶番でつないだもので、表が「白」で裏側が「黒」であるものが一般的である。蝶番でつないであるので、「屏風」のように開いて立てることができる。それでストロボの光をバウンスさせてモデルさんのシャドーを起こすのである。言ってみれば、据え置き型の大きなレフ板である。裏が黒であるのは、「黒締め」を行うためである。光は回折して直接当たっていない部分にも回り込んでいくし、スタジオの壁が白ければ壁からバウンスした光がモデルのシャドー部を起こす。シャドー部を起こさず落とした方が美し写真もあるのでシャドー部をきっちりと「締めて」おきたい時にはカポックの黒い色の方を利用するのである。

と、さも使い慣れているような話を書いたが、実は一度も使ったことがない(爆)。ただし、私はどんな時でもその場にあるものを代用して撮ることが習い性になっているので、使えるものがその場にあればそれを使って光をディフューズさせたりバウンスさせたり、「黒締め」したりする(黒締めなんてまずしたことはないけれど)。

この写真を撮ってみようと思ったのは、干していた布団が「カポック」そのものと言って良い状態であったからである。ただ、布団は「白」ではなく「クリーム色」だったので色被りすることは撮る前からわかっていた。いま、手元にMacBook Proがない。つまり、撮った写真をレタッチすることができない。で、撮影時に「ホワイトバランス」を「電球」モードにして撮ってみたり、AWBのカラーバランスを少し動かしたりして4〜5枚撮ってみた。

iPhone用のレタッチソフトでちょこっとだけ弄ってみたが思うようにはならない。私は色をあまりいじらないが(フィルムシミュレーションを変えてそれをしている)、いじる時にはほんのわずかな微調整を行う。iPhone用のレタッチソフトではそんな細かいことはできない(少なくとも私にはできない)。まあ、そんなわけで「作例」にしてはお恥ずかしい写真であるが、「ディフューズ」した光と「バウンス光」というものが「綺麗な光」を作り、「柔らかく上品な」写真を撮らせてくれるのだということを知ってもらうには役にたっただろう。

私は基本的に「柔らかい描写」の写真が好きだ。柔らかな描写の写真には「上品さ」があるから。私は、人間が身につけべき属性としてももっとも大切なものは「思い遣り」と「上品さ」だと思う。

もう少し明るくしたらもっと綺麗に見えるが、私はローコントラストでアンダーな写真が好きなので。

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こういう状態で撮った。もし、左側の障子を閉めていないと光が強すぎる。この「障子」は「ソフトボックス」と同じ効果を持っている。もし、右側の布団がなければ、花のシャドー部が潰れてしまう。この布団から「バウンス」した光が「フィルインライト」となってシャドー部を「満たす」のである。布団をもっと花に近ずければシャドーをもっと起こすことが出来るが、適度な陰影がある方が美しいので僅かに起こすだけにとどめている。。というほど綺麗に撮れていなくて恐縮であるが、Photoshop CCで微調整すればもっと綺麗な写真になる。

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障子を開けたままだと強い光が入ってきて「柔らかい」描写の写真にはならない。この時は14時を回っているのでまだ良いが、太陽が正中にある正午前後だと光はもっと強い。私は仕事で子供の写真を撮っていた時には一番光の強い時間帯に撮影をしていたので、光を「ディフューズ」させることと「バウンス光」を上手に使うことを絶えず考えて撮影していた。その経験は、私の「眼」を養ったと思う。

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by dialogue2017 | 2018-11-05 16:00 | 写真とカメラの話し | Comments(0)